歯磨で子どものレジリエンス向上

 レジリエンスとは、ストレスやトラブルに対応して逆境から立ち直る精神的な回復力であり、レジリエンスが高い人は、うつ病や不安症のリスクが低いといわれています。また、貧困は健康リスク因子の1つであり、幼少期の貧困はレジリエンスの低下につながると考えられています。一方、歯磨きは幼少期の自己管理能力と関連し、歯磨きの頻度が低い小学生に不登校が多いと報告されています。

 これらを背景として、歯磨きとレジリエンスの関連、さらに、その関連が貧困の有無によって異なるかに関する研究結果が、2024年東京医科歯科大学(現東京科学大学)から報告されています。

▼方法 東京都足立区の小学1年生の貧困・レジリエンス・歯磨き頻度を調査し、小学4年生になった段階で追跡調査を実施した。貧困は、(1)世帯収入300万円未満、(2)本・スポーツ用品・必要な家電製品を購入できないが1つ以上ある、(3)給食費・住宅ローン・電気代・電話代・健康保険料を払えないが1つ以上ある、のいずれかに該当する場合とした。レジリエンスは、子どものレジリエンス評価スケールという指標を用いた。

▼結果 1年生の貧困の割合は23%。歯磨き1日2回以上が78%。貧困がない児童と歯磨き1日2回以上の児童は4年生時点のレジリエンスが高かった。さらに、貧困がない児童は歯磨き頻度でレジリエンスに差がなかったが、貧困がある児童は歯磨き1日2回以上でレジリエンスが高かった。

▼結論 歯磨1日2回以上によるレジリエンスの向上は、貧困児童でより顕著である。歯磨きという実践しやすい行動が、貧困児童の精神的健康にとって役立つであろう。貧困で発生しやすい慢性炎症がレジリエンスを低下させることから、歯磨きによって炎症が抑制されることでレジリエンスへの負の影響も抑えられる。また、歯磨きという少し面倒なライフスタイルを保つことが、子どもの自己管理能力とレジリエンスを醸成する可能性がある。

かきざき小児科アレルギー科クリニック

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